OFFー最終リハー ページ12
・(途中から春夏冬天音side)
いよいよ明日が当日。
昼の部、夜の部って分かれてるから今日中に2つとものリハを終わらせて、明日は演出が上手くいくかの確認だけ。阿部ちゃん達と小柳探偵奇譚チームが来るのは夜の部って聞いてるから、夜の部は限界突破前提。
推しと同じ景色を見てみたいって夢はほぼ叶ったもんだから、次の目標を考えたとき、私は決めた。自担…つまりは阿部ちゃんを私のファンにする。恋は叶わずとも、私はあの人を追い越して夢中の的にする。
だって私、強欲なアイドルだし。
「天音」
春「ん?」
「私、いつもより私であるから、全力で合わせて」
春「うへぇ…まじ?」
「うん。これからの“アレ”の為に抑えはするけど、それでも明日1日私はよりアイドルであるよ」
深く言わなくてもわかってくれる天音は、流石幼馴染だな〜なんて思いながら、明日と同じぐらいまでこのリハで輝くつもり。
春「じゃああんたも、私に合わせてよね」
「私を誰だと思ってんの?ちゃんと食いついて離さないんだから」(笑)
既に衣装に身を包んだ私達は静かに拳を合わせ、各々のスイッチを入れる。
そして私達は額を合わせていつもの言葉を紡ぐ。
春「今は、スタッフさんを魅せる気で」
「私は天音で、天音は私」
春「正反対でも鼓動等しく」
「「やるよ」」
最後のリハ、明日限界が越せるように、互いに全力を尽くすんだ。
・春夏冬天音side
「♪〜〜〜〜」
ステージの上から放たれるいつもより強いAの輝きに、私は勿論スタッフさんですら見入ってしまいそう。
あれが…Aの全力。
私は、A以上にアイドルに適した人物を知らない。
眩しい太陽の輝きを放つことができながら、自分の輝きを制御して何者にもなれるその力。
自分がドルオタなのも生かしてファンに対するサービスと配慮の精神の高さ。
とてつもなく広い音域を生かした歌。
私に負けず劣らずのダンススキル。
親近感を持たせる抜けた部分。
何度か「Aに私はいらないんじゃないか」なんて思ったりもしたけれど、そうじゃないことを知った日もあった。それに、私はAの努力を一番知ってるから、嫉妬の感情なんて湧かなかった。
『私さ、憧れを超すんだ』
昨日言われたその覚悟と決意は多分私にしか知れないことだから。
私はいつまでもファンと“あの人”にマウントとってやるんだ。
『Aを一番知ってるのは私だ』ってね。
754人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:斗亜 | 作成日時:2024年3月29日 14時